しつけの第1歩は社会化

実は子犬のうち、しかも生後12週くらいまでにやっておくべき重要なことがあります。それは、「社会化」です。 このページでは、しつけの中でも一番重要で子犬を迎えたとき最優先でやるべき「社会化」について取り上げます。
これから犬を飼う方や、子犬を迎えたばかりで何をすれば良いか分からないという方は、是非見ていってください。

社会化とは

そもそも社会化とは何でしょうか。

一番簡単にいってしまえば、社会化とは 様々な環境に馴らすこと です。

犬たち(人間も)は、これからいろいろな場所に行ったり、人に会ったり、犬に会ったり、いろいろな音を聞いたりします。人が多くて賑やかな場所や騒音が発生する工事現場などは、馴れていないと警戒する犬が多いです。特に音に敏感な子はゆっくり時間をかけて馴れさせる必要があります。馴れていないと、過剰に警戒して吠えたり、逃げようとして暴れることが考えられます。

そんな場所に行かなければいいと考える方もいるかもしれませんが、最低限のことには馴れておかないと、日常生活にも支障が出ます。「自動車の音におびえるから散歩に行かない」というわけにはいきません。散歩程度は出来るようになっておかないと、家以外の場所に行くこと自体が大きなストレスとなってしまいます。

例えば、病院に行ったとき診察台の上で暴れてしまい、怪我をするかもしれません。適切に診察が出来ず、病気の発見が遅れてしまうかもしれません。
また、飼い主以外の人に慣れていないワンちゃんがいたとしたらどうでしょうか。散歩で人とすれ違うたびに吠えてしまうかもしれません。病院で先生が診察しようとすると噛みついてしまうかもしれません。これでは周囲に迷惑をかけるだけでなく、ワンちゃん自身の健康や寿命も脅かしてしまいます。


普段の生活で毎日接するものにいちいち警戒していては日常生活がストレスだらけ。そのような事態を避けるために重要なことが、子犬のうちにいろいろな環境に馴らすこと、すなわち「社会化」なのです。



 

社会化期

生後3週から12週が社会化に適していると言われており、それを過ぎると新しい環境や刺激に馴れにくくなります。全く馴れないわけではありませんが、この時期にいろいろな刺激に馴れさせておくと後が楽なので、少しでも早く社会化トレーニングを始めることをお勧めします。

この時期は、散歩でいろいろな場所に行きましょう。交通量が多い通り、人がたくさん歩いている駅前、子供たちが遊び回っている公園など、比較的賑やかな場所がおすすめです。

この時期は、怖がることはあまりありません。ご褒美(ドッグフード)を1粒あげてみて、食べてくれれば大丈夫です。恐怖心が強い場合は食べる余裕がありません。フードを食べてくれない場合は少し静かな場所へ移動すると恐怖心を和らげることが出来ます。


また、自宅で社会化トレーニング用の効果音CDを聞かせるのもいいでしょう。Youtubeにも効果音として使える動画がたくさんありますので、社会化トレーニングに活用してみてください。


馴れさせるもの

  • 飼い主以外の人
  • 他の犬
  • 子供たちの声や動き
  • 工事の音
  • のぼり




飼い主以外の人

馴れさせるべきものはたくさんありますが、まずは人に慣れさせるトレーニングをしましょう。人に慣れておけば、獣医師も適切な診察が出来るでしょうし、噛みつき等の対人トラブルのリスクを大きく下げることが出来ます。


具体的な方法は、いろいろな人からご褒美(大好きなフードなど)をもらうことです。人から大好きな食べ物をもらえると「人に会うといいことがある」と学習しますので、人を好きなります。好きにならなくても、人が嫌いになるリスクはかなり低くなりますので、 近所に犬が好きな方がいるなら、フードをあげてもらいましょう。1度にあげる量は「ドッグフード半粒~1粒」で十分です。 近所に頼める方がいない場合は、犬の幼稚園などに預けて、いろいろな人にふれあう練習をしてもらうといいでしょう。ワンちゃんを迎えてから1~2ヶ月で100人からフードをもらう経験をするのが目標です。



他の犬

散歩中に他の犬とすれ違いたびに吠えかかるというお悩みもよく聞きますが、警戒して相手の犬を追い払おうとしている場合が大半です。この場合、吠えているときに叱っても効果はゼロ、むしろ悪化させますので避けましょう。

吠えの原因が警戒であるならば、警戒させなければ吠えることもありません。子犬の頃から他の犬に馴れさせておけば、警戒吠えを予防することができます。

 

子供たちの声や動き

子供に対して警戒心を抱く犬は少なくありません。子供たちは、

  • 突然走り出す
  • 奇声を上げる
  • 犬に正面から近づく
  • 突然触る

など、犬を警戒させる行動が目立ちます。散歩中に犬が驚いて、近所の子供に噛みついてしまったということがないよう子犬の頃から馴らしておきましょう。

 

 

工事の音

散歩をしていると、たまに遭遇するのが工事現場。キャタピラが動く音や大型ドリルでコンクリートを壊す音など、滅多に聞かない大きな音を苦手とするワンちゃんは少なくありません。特に音に敏感な子はおびえてしまうかもしれません。尻尾や耳の向きなどをよく観察しましょう。フードを食べる余裕すらないくらい怖がっている場合は、少し離れた場所でフードを上げるようにしましょう。食べてくれないと馴れることはありません。

 

のぼり・自転車カバー

のぼりや二輪車のカバーも要注意です。無風状態でしたら問題ありませんが、風にたなびいているとワンちゃんは警戒します。風が吹いている時は外出できない、ということがないように子犬の頃から馴れさせておきましょう。

 

傘も馴れていないと警戒します。とくにジャンプ傘のように一気に開く傘はワンちゃんがビックリしてしまうので注意が必要です。

大雨が降っているときは散歩に行かないという選択肢もアリです。しかし梅雨のように弱い雨が長期にわたって降り続ける場合は、傘をさして散歩することもあります。「傘を怖がって梅雨入りから梅雨明けまで外出できない」ということがないように、しっかり馴れさせてあげましょう。



おわりに

ここまで社会化の意味や目的などをお話ししてきましたが、社会化は万能ではありません。人にも犬にも馴れるよう、たくさん練習したから絶対に大丈夫というわけではないんです。なぜならワンちゃんの行動は、遺伝的要因と経験の両方によって決まるからです。生き物に100%はあり得ません。

「うちの子は呼び戻しが完璧だから」「うちの子は絶対に噛まないから」という理由で、公園などで犬をノーリードにしている人を見かけることもありますが、はっきり言ってナンセンスです。社会化もその他のトレーニングも100%はあり得ないと認識してください。

社会化を含む基礎的なしつけは、やっても完璧ではないが、やらなければ高確率で(ほぼ確実に)問題行動につながると覚えておきましょう。

 

 

 

 

 

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