初めて犬を飼った方は、何から始めてよいか分からず困惑されているのではないでしょうか?しつけにも優先順位があり、特に優先度が高いのが「社会化」「飼育環境の整備」「生活習慣の確立」の3つです。
子犬の社会化とは?しつけで最も優先度が高い理由
社会化とは、様々な環境や人、物音などに馴れさせるトレーニングです。
別の記事では「環境設定が一番効果的で誰でもすぐに実践できる」と書いてあったのに、なぜ社会化を優先させるのかと疑問を感じる方もいらっしゃるでしょう。
確かに、環境設定は簡単で効果が高い項目ですが、優先度は社会化の方が圧倒的に高いです。なぜなら
です。
子犬の社会化は「生後3ヶ月までにできるだけ多くの刺激に馴らす」ことが求められ、トレーニングの時期がとても重要です。
「3回目のワクチンが終わるまでは外に出さないように」と指導されることもあります。確かに、ワクチンが終わっていない子犬が散歩中に地面を舐めてしまうと雑菌が体内に入るため、よくないことも事実です。
しかし、地面を歩かせなくても外出は可能です。ワクチン接種が終わっていない時期でも、抱っこやキャリーケースを使用し、外の世界を見せてあげてください。この社会化期は見知らぬ環境や物、人に対して警戒心が低く、ただ連れ出すだけで自然と馴れていきます。トレーニングのスキルはほとんど必要ないので、初心者の方でもそれほど苦労することなく実施できるでしょう。

連れ出すだけで自然となれていくのは社会化期までで、生後3ヶ月を過ぎれば無理になれさせようとすると逆効果になる場合もあります。子犬を迎えるのが早くても生後2ヶ月であることを考えると、最初の1ヶ月がとても重要ということです。
この時期に様々な環境に慣れさせておかないと、将来警戒心が強くなり、人や他の犬に吠えやすくなる傾向があります。将来発生するであろう問題を未然に防ぐために、社会化トレーニングを実施しましょう。
社会化トレーニングについての解説と具体的なやり方はこちら(執筆中)
犬の問題行動を防ぐ「飼育環境」の考え方
問題の中には、犬の行動を変えることがほぼ不可能なものもあります。たとえば、家の中から窓の外を見て、通行人に吠えかかるというお悩みはよくあります。残念ながら、この問題に対する解決策は、「家の中から外を見えないよう窓に目隠しをする」以外にはありません。この場合は犬の行動を変えるのではなく、環境を変えることでしか問題解決にはつながらないでしょう。

また、不適切な飼育環境はトイレトレーニングを困難にします。子犬を迎えた初日から、家中自由に歩かせている方が多いですが、これではトイレを覚えることは困難です。犬は決められた場所で排泄するから自然に覚えると思われるかもしれませんが、これは半分正解で半分間違いです。
犬は決められた場所で排泄するのではなく、自分で決めた場所で排泄するのです。ワンちゃんにトイレシーツの上を排泄場所として選んでもらうためには、環境の工夫が必要です。環境が不適切だと、いつまで経ってもトイレの失敗は続きます。実際、6歳になってもトイレを覚えられなかったという事例もありました。
他の記事でも書いたとおり、環境設定は難しいテクニックが不要であり、知識さえあれば初心者の方でも簡単に実行できます。そして、その効果は皆さんが思う以上に高いものです。「そんなことで変わるはずがない」と思わず、ぜひ飼育環境の重要性にも目を向けていただけたいと思います。
具体的な環境設定に関してはこちら(執筆中)
犬の行動を左右する「生活習慣」の重要性
生活習慣も犬たちの行動に大きく影響します。過剰な吠えや散歩中の強い引っ張り、攻撃行動などが見られるワンちゃんは、日頃の活動量が少ないケースが散見されます。言い換えれば、ワンちゃんが暇でストレスを抱えてしまっているケースです。このように、生活習慣の中にストレス要因があり、それが問題の根本原因になっていることも多々あります。褒める・叱る以前に、ワンちゃんの生活習慣が適切であるか確認することも大切です。
犬の活動というとお散歩を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?たしかに、お散歩は大切です。気分転換だけでなく社会化という目的もあり、ワンちゃんを飼育する上で重要な項目です。
しかし、お散歩だけでは犬たちの行動欲求を満たすことは出来ません。遊び以外にも、室内で遊んだりオスワリなどのトレーニングをすることも大切です。
人間には読書や音楽鑑賞、ネットサーフィンなど、様々な暇つぶしのための娯楽があります。とくに多趣味な方は暇で困ることはないでしょう。しかし、ワンちゃんたちはどうでしょうか?彼らの暇つぶしは、家具をかじる、自分の体を舐め続ける、食糞してみるなど、人間に「問題行動」と見なされてしまうものばかりです。

つまり、彼らには暇つぶしが許されていないのです。飼い主が適切に構ってあげなければ、暇でストレスが溜まってしまいます。暇なのはいいことだと思われがちですが、暇すぎると生き物はストレス感じるのです。トレーニングや遊び、散歩はこのような暇な時間を少なくしたり、質のよい休息をとるための活動でもあります。
暇がもたらすストレス体験法
「暇がストレスになるわけがない」と思うのであれば、ぜひ暇を体験してみてください。ただし、イライラしても私は責任をとれませんので、自己責任でお願いします。
前日にしっかりと睡眠をとり、お休みの日に丸一日ご自宅で過ごしてください。ただし、冷蔵庫と空調を除く全ての電子機器は電源を落としてください。スマホも使用禁止です。居眠りしたり本や絵画などを見るのもNGです。歌を口ずさむ、体操をするなどもやってはいけません。もちろん、ご家族との会話も禁止です。ただ椅子に座ってボーっと壁を見て一日過ごしてください。やってもいいのは食事と飲水、排泄行動だけです。これは、暇なワンちゃんの一日を再現しています。
何か一つでも娯楽につながる行動をとった時点でゲームオーバーです。おそらくほとんどの人が午前中でギブアップでしょう。
何もせずに一日過ごすというのは、それほど苦痛なのです。さらにそれが何日も続いたら確実にメンタルに影響します。そして、それが問題行動につながったとしても不思議ではありません。
※この体験は無理に行う必要はありませんが、“何もしない時間”がストレスになるということを想像して頂けると幸いです。
トレーニングの意義
オスワリやフセ、お手などを教えることは、意味があるのでしょうか?フセができないからといって何か問題行動が発生するかというと、そういうわけではありません。
先に述べた暇な時間を少なくするというのも、トレーニングの目的の一つです。しかし、それだけではありません。トレーニングの一番の目的は、何か行動をした結果として(報酬)食べ物を貰えたという経験をさせることです。なぜなら、その方が犬たちの満足度が高いからです。
人間でも、政府の給付金より仕事の報酬で得たお金の方が、仮に金額が同じでも満足度は高いのではないでしょうか?これは人間以外の生き物でも同じです。何もせずに貰えた方が犬たちは喜ぶのではないかと思うかもしれませんが、実は逆なのです。
トレーニングでご褒美をあげることを毎日の生活の中に取り入れると、ワンちゃんの満足度は確実に上がります。

トレーニング目的の間違った解釈
違いしないで頂きたいのですが、コマンドトレーニングの目的は「犬と人間の上下関係を分からせるため」ではありません。以前は、犬が飼い主を順位付けすると考えられていましたが、現在では学術的に否定されています。仮に順位付けがおこるとしたら犬同士でしょう。「飼い主が上であると分からせる」というマインドで犬たちと接すれば、間違いなく飼い主との関係を悪化させます。
上下関係の誤解についてはこちら(執筆中)
生活習慣に関してはこちら(執筆中)
まとめ
本記事では、犬のしつけにおいて優先順位の高い「社会化」「飼育環境」「生活習慣」の3つについて解説しました。これらは問題行動を未然に防ぎ、犬と飼い主が安心して暮らしていくための土台です。特に社会化期は時間が限られており、一生に一度の重要な時期です。
適切な環境の整備や日々の生活習慣の見直しもまた、犬の心身の健康を守るうえで欠かせません。難しいテクニックは不要です。社会化と違い、成犬になってからでも効果があります。まず「暮らし方」を見直すところから、愛犬とのよりよい関係づくりを始めてみましょう。


