犬を飼って最初に悩むことになるのは、トイレと夜泣きの問題でしょう。夜泣きは相手にしなければ、数日で解決です。しかし、トイレ問題はそう簡単ではありません。今このページをご覧になっているのも
- 愛犬がなかなかトイレを覚えない
- トイレの失敗が続いて心が折れそう
- 家全体が犬のトイレと化している
- 犬は決められた場所で排泄すると思っていたのに!
といった悩みがある方ではないでしょうか。
トイレのしつけについては他のページでも簡単に説明しましたが、ここではより具体的にお話しします。トイレのしつけの目的や効率のいい教え方、やってはいけないことなど、トイレのしつけをする際には必須の知識ですので、是非最後までご覧ください。なお、マーキングは単なる排泄行動とは別物ですので、他のページで改めて解説します。
犬の排泄は自宅で済ませるのが基本
お散歩で排泄することもありますし、100%家の中というのは現実的ではありません。生き物ですので100%はあり得ないからです。しかし、排泄はなるべく家の中で済ませて、外での排泄は最終手段にしておきましょう。外で排泄をするとどうしても匂いが残ってしまい、他の犬のマーキングを助長させかねません。マーキングは犬たちの縄張り主張です。他の犬の匂いがあると、自分の匂いで他の犬の匂いを消そうとします。つまり、一度排泄物の匂いがついてしまうと、そこは犬たちの縄張り主張の場となってしまい、大量の尿が同じ場所にかけられてしまいます。2021年三重県では、犬の尿で道路標識や信号機が錆びて折れる等の被害も発生しました。(注1)
排泄はできる限り自宅で済ませてからお散歩に行く、それでも外で排泄してしまったときにはきちんと処理をしてください。オシッコの場合、水をかけるだけでは不十分です。数リットルの水があればオシッコを流せますが、ペットボトルの水をかけたくらいでは、広がるだけでしょう。オシッコ成分を除去することが重要ですので、トイレシーツで拭き取ることを心がけてください。
子犬のトイレのしつけはハウストレーニングとセットがおすすめ
次にパピーの具体的なトイレトレーニング法をご紹介します。トイレのしつけはハウストレーニングとセットでやるのがおすすめです。子犬を迎えたその日から、家中自由に歩き回らせている方もいらっしゃいますが、絶対に止めましょう! この状況ではトイレのしつけが無駄に難しくなります。犬がトイレを覚えるのは習慣によるものです。トイレトレーやトイレシーツの感触と排泄行動が結びつかない限り、トイレを覚えることはありません。
言い換えれば、トイレの成功率は「今まで何回トイレの上で排泄したかで決まる」とも言えます。
家の中を自由に歩き回っている状態では、催したときにトイレではない場所である確率が高いです。ある程度、トイレを覚えた子犬であっても、催したときにトイレから離れた場所にいた場合、わざわざトイレまで移動して排泄することはないでしょう。では「催した場所がトイレの上だった」という状況を作るにはどうすれば良いでしょうか?
そうです。子犬の移動範囲の大半をトイレにしてしまえばいいのです!しかし、自宅の全てを犬のトイレにはできません。重要なことはサークル等を使って子犬の行動範囲を制限してあげることです。
こちらの写真のようにハウスとサークルを設置します。ハウスは寝床、サークルはトイレになっています。犬は寝床では排泄したがらない習性が有りますので、ハウスを寝床と認識してくれれば、ハウス内で排泄することはなくなります。ハウスで排泄しないのであればサークルの方ですることになりますが、サークル内はトイレシーツが敷き詰めてありますので、失敗はあり得ません。
このような環境を設定することで、トイレ失敗の確率を限界まで下げることができます。
ただし、一日この中に入れっぱなしでは可哀想ですので、オシッコした直後などはサークルからだして遊んであげましょう。遊ぶ時間の目安は5~10分程度です。それ以上は飽きてしまうだけですので、ワンちゃんの集中がピークを過ぎた時点で遊びを終えるのが理想です。
遊びが終わったらサークルに戻し、お水を飲ませてあげてあげましょう(遊ぶ前に飲ませてはいけません)。それからしばらくはお休みの時間です。「出して欲しい!」と要求する場合はコングなどでワンちゃんが一人で遊ぶ時間にしてもOKです。サークルの中で退屈しないための工夫です。おもちゃを破壊して飲み込むなどの事故が発生しないよう、数分に一度様子を見てあげてください。
トイレのコマンドを教えよう!
お座りや伏せと同じように排泄にもコマンドをつけられることをご存じですか?コマンドはオシッコとウンチで分けましょう。
オシッコするときのコマンドでメージャーなものは
- 「しーしー」
- 「ワンツーワンツー」
- 「トイレトイレ」
等です。一度トレーニングを始めたら途中で変えないようにしましょう。ワンちゃんがオシッコする体制に入ったらコマンドを繰り返しかけましょう。もしタイミングが分からなければ、オシッコをし始めた瞬間からコマンドをかけても遅くはありません。このときは一度だけコマンドをかけるのではなく、「ワンツー、ワンツー、ワンツー、」のように、ワンちゃんの排泄が終わるまでコマンドをかけ続けましょう。
子犬のトイレのしつけでやってはいけないこと
実はここが一番重要な部分です。しつけで重要なことは「逆効果になることを絶対にやらない」ということ。どんなに正しい手順を踏んでいても、逆効果になることを同時に行っていたのではいつまで経っても終わりません。走行している自動車を止めるのにアクセルを踏んだまま、ブレーキを踏む人はいないでしょう。停車させたいのであれば、加速しないようアクセルを戻してからブレーキを踏むのが当たり前です。しつけも同じで、逆効果になったり悪化させることをしないことが最も大切。しかし多くの方が、逆効果になることをしてしまっているのが現実です。それはアクセルを踏みながら自動車を停車させようとするのと同じようなことなのです。ここでは、トイレのしつけにおいて一番やってはいけないことを2つ紹介します。
失敗したとき叱る
排泄を失敗したとき(トイレ以外で排泄したとき)に叱ってはいけません。なぜなら、犬は「トイレ以外でオシッコしたこと」ではなく「排泄そのもの」を叱られたと解釈することが多いからです。排泄を叱られたと解釈されてしまうと、ワンちゃんは飼い主さんの見ていないところで排泄しようとします。ワンちゃん用のトイレは飼い主さんの目が届く範囲に設置してあるのが普通です。従って「飼い主さんから見えない場所=トイレではない場所」となります。つまり排泄の失敗を叱ると、トイレでない場所での排泄が強化されてしまうのです。
失敗したとき大きな声を出す
子犬が床でオシッコしてしまうと、つい「ダメダメ!」とか「あーー~~っっ!!」などと大きな声を出したくなります。しかし大きい声を出すとワンちゃんはビックリしてしまいます。大きい声も叱るのと同じ効果がありますので、ご注意ください。重要なことは、ワンちゃんが排泄しているときは、たとえそこがカーペットの上であっても邪魔しないということです。
子犬のトイレのしつけで冷静な対応をするコツ
といっても無意識に声が出てしまうもの。どうすれば、子犬がお漏らししたときに冷静でいられるのでしょうか。私が考える解決方法は2つです。
汚されて困る物を犬の行動範囲内に置かない
座布団や高価なソファなどの上でワンちゃんがオシッコしてしまえば、声を出すなというのは無理な注文です。おしっこで汚したくないものはワンちゃんの行動範囲外に置く。絶対に汚したくないものに子犬が接触できないようにしましょう。
子犬がトイレを失敗するのは当たり前だと考える
ワンちゃんが行くところは100%オシッコやウンチで汚れると考えましょう。トイレシーツの上でできた場合は「珍しいこともあるな~」と思うのが正解です。断言しますが、最初の数ヶ月は床もカーペットもオシッコまみれになります。覚悟を決めてください。子犬がトイレを失敗するのは当たり前なのです。それを受け入れれば、目の前で子犬がお漏らししてしまっても、ある程度冷静でいられるのではないでしょうか?
子犬のトイレの失敗対応策
排泄を始める直前、ワンちゃんが床の匂いを嗅ぎながらクルクル回り始めた段階であれば、抱っこしてトイレに連れて行きましょう。このときも慌てないこと、大きな声を出さないように落ち着いて対応することが大切です。
トイレでない場所で排泄を始めてしまった場合、今回は諦めて終わるのを待ちましょう。気にせず上記のコマンドを繰り返しかけてください。コマンドと排泄行動が結びつくのを早めることができます。
まとめ
トイレのトレーニングにはコツがあります。このページで紹介したことが実行できれば、サークルの外で遊んでいるときも自主的にトイレに移動して排泄するようになってきます。逆に失敗を叱ってしまったり、子犬の頃から家の中を自由に歩き回らせていると、トイレを覚えるのに1年以上かかることも珍しくありません。是非、ポイントを押さえて効率の良いトイレトレーニングを実践してください。
参考文献等
太田光明・大谷伸代編著(2014)『ドッグトレーニング パーフェクトマニュアル』チクサン出版社
注1)「信号倒壊 原因は犬の尿」『産経新聞』2021年8月12日