おやつ(フード)を使う犬のしつけは間違い?正しい?


当サイトではアフィリエイト広告を利用しています


飼い主さんから、「しつけのご褒美に食べ物を使っても良いのか?」というご質問を頂くことがあります。トレーナーや訓練士の中にはフード(食べ物)の使用に否定的な方もいるので、混乱されているのでしょう。このページをご覧の方も

  • フードを使ったしつけを指導されたが、他のトレーナーからは使うなと言われた
  • フードを使うと犬を甘やかすことになると言われた
  • フードなど使わなくてもしつけは出来ると言われた
  • フード肯定派と否定派どっちが正しいのか分からず戸惑っている

という方ではないでしょうか?

結論から言ってしまうと、フードを使うことを推奨します。しかし絶対ではありません。フードを使うか使わないかより、大切な判断基準があります。その基準を満たしていれば、フードは使っても使わなくてもどちらでも構いません。このページでは、しつけ方を選ぶ際の基準と、多くのトレーナーがフードの使用を推奨する理由をご紹介します。

ちなみに筆者は報酬としての食べ物を「おやつ」と表現することが大嫌いなので、「フード」と表記しています。理由は「おやつ」という言葉には、毎日決まった時間に与えるもの「3時のおやつ」のイメージがあるからです。報酬として与える食べ物は、人間の3時のおやつとは全く別物なので注意しましょう。

「午前中トレーニング頑張ったね、3時のおやつに大好きなジャーキーあげるね」という与え方は、トレーニング効果皆無です。

この記事では、家庭犬のしつけ方を扱っております。災害救助犬や盲導犬など、使役犬のトレーニング法とは異なりますので、ご注意願います。
この記事で分かること
  • しつけ方を選ぶ際の基準
  • フード以外にご褒美として使えるもの
  • トレーナーがフードを使うしつけ方を推奨する理由
スポンサーリンク

しつけ方を選ぶときの基準4選

「フードを使わないトレーニングは優れている」「フードを使うトレーニングは劣っている」といった主張は根拠(※)が薄く、相手にするだけ時間と労力の無駄です。なぜなら、「フードを使う」のは手段であり、目的が健全に達成されるのであれば、しつけ方にこだわる必要がないからです。

犬のしつけにおいてどのようなしつけ方を選ぶのか、その判断は以下の4点を基準にすると良いでしょう。これらを全て満たしたしつけ方であれば、フードは使っても使わなくても、どちらでも構いません。

(※)多くの場合、使役犬のトレーニングを根拠としています。

①効果があること

いうまでもありませんが、効果がないしつけ方は選ぶべきではありません。そんなの当たり前だと思われるかもしれませんが、効果のないしつけ方を効果的と思い込んで継続してしまっているケースは少なくありません。一見効果があるように見えるけど殆どない、または効果が薄くて副作用が多いしつけ方などもあります。一度冷静になり、犬たちが学習しているか行動の変化を記録するなど、効果を客観的に分析した方が良いでしょう。

個人の経験や直感に基づいた手法は、一見効果的に見えても効果がないものが多い傾向にあります。学術的に根拠のあるしつけ方を選ぶようにしてください。

②犬に苦痛を与えないこと

犬に苦痛を与えないしつけ方があるのに、苦痛を与えるやり方や、苦痛を与えるリスクが高いしつけ方を選ぶのであれば、それは虐待です。可能な限り犬に負担がかからない方法を選ぶようにしましょう。

③周囲の人に迷惑がかからないこと

周囲の人を不快にしたり、怪我をさせるリスクの高いしつけ方はNGです。
遊びをご褒美にしてしつけることも出来ますが、お散歩中に道路でボール遊びをするのは危険なので、やるべきではありません。しかし、自宅の中や貸し切りドッグランの中なら問題ないでしょう。

ベストなしつけ方は、場所や環境によっても変わることがあるのです。

 

④飼い主さんが今日から継続して実行できること

当然のことですが、どんなに優れたしつけ方であったとしても、継続できなければ何の意味もありません。ここを軽視し、初心者には実践が困難な上級テクニックを推奨するトレーナーもいます。
特に初心者のうちは、安易に上級テクニックに手を出さないことが、長続きの秘訣です。

スポンサーリンク

フードを使わないしつけ方

先述の条件を全て満たしていれば、方法にこだわる必要はありません。ただし罰を与えるやり方は②の「犬に苦痛を与えないこと」という条件を満たさないので、避けてくださいね。ここでは、フード以外の物をご褒美にするやり方を2つご紹介します。

「罰を与えても叩いても、犬は飼い主にすり寄ってくるから苦痛を与えたことにはならない」というトンチンカンな主張をするトレーナーや訓練士の方には、別記事をご用意しますのでお待ちください。

遊びをご褒美にする

一つ目は遊びをご褒美にする方法です。これは遊びながらトレーニングをするといった方が適切かもしれません。一度遊びを中断し、指示通りの行動(例えばオスワリ)が出来たら遊びを再開します。これを繰り返すと、「オスワリすれば、楽しいこと(遊び再開)がある」と学習するため、オスワリを覚えやすくなります。

この遊びをご褒美にするというやり方で一番教えやすいのは、咥えているものを放す、所謂「ちょうだい」です。

  1. 引っ張りっこで遊ぶ
  2. オモチャの動きを止めて、犬がオモチャを放すのを待つ
  3. オモチャを放す瞬間に「ちょうだい」と声をかけて(ここが難しい)引っ張りっこを再開する

これを繰り返すと、「咥えているものを放せば遊んでもらえる」と学習するので、フードを使わなくてもトレーニングが成立します。

また、「ちょうだい」と声をかけたときに咥えているものを放すようになります。これは条件反射のようなものです。

注目をご褒美にする(高難易度)

2つめは注目をご褒美にするというやり方です。生き物にとって、好きな相手からの注目はご褒美になります。犬にとっては飼い主からの注目ですね。

まず、教えたい行動を犬が自発的にとるまで、ひたすら待ちます。このとき視線は犬から外しておいてください。教えたい行動を犬がとったら犬の方を見る、しばらく目をそらして、教えたい行動を犬がとったら犬の方を見る、これを繰り返します。すると犬はその行動をとれば飼い主に注目してもらえると学習するので、行動を覚えます。

ただし、この手法は注目するタイミングなどが難しいため初心者には無理ですし、そもそも飼い主が犬に嫌われている場合は、逆効果になります。根気も必要ですし、犬が自発的に行動しない限り教えられないという、大きなデメリットも存在します。

スポンサーリンク

犬のしつけにフードを使うことを推奨する2つの理由

すでにお話ししたように、先述の4つの条件を満たすのであればしつけの手段はどんなものでも構いません。

フードを使わないしつけ方でも条件を満たすものがあるにもかかわらず、私たちがフードを使うことを推奨するのには理由があります。ここではフードを使うしつけ方を推奨する理由を2つご紹介します。 

初心者でも比較的簡単であるから

先に紹介した、注目をご褒美にするという方法は、条件を満たしていますが、とても難易度が高いので、お勧めできません。フードで意識を誘導し、犬の行動を引き出すやり方が一番簡単で、初心者でも実行しやすいやり方です。

「リードで引くやり方ならもっと簡単にできる」と思った方、それは間違いですよ!リードショックには、軽いもの(指先を少し動かす程度)から、犬の体を引き寄せるくらいの中度のもの、犬が萎縮するくらいの強いものがあります。犬が萎縮するくらい強いものが論外であることはいうまでもありません。

問題は犬の体を誘導するために使う中度のリードショックです。これは、日常的に繰り返していると犬の体にダメージが蓄積されます。首輪にリードを装着している犬は特に注意が必要です。

知人の獣医師から、首を痛めている犬が多いという話を聞きます(過度な引っ張りっこが原因の場合もあり)。リードを引く場合は、犬の体に負担がかからないようにしなければなりません。リードを引く力の加減はとても難しいんです!

この話をすると、「うちの子はとくに体に問題ないけど?」と反論されるトレーナーがいます。そのようなとき私は「どこの動物病院で診察を受けたのですか?」と質問するようにしています。大抵、返ってくるのは「診察は受けていない」という回答です。要するに自分で観察しているだけなんですね。

残念ながら、ワンちゃんの体のダメージは、ド素人が観察した程度では分かりません。私を含め、トレーナーは獣医師ではありません(トレーナー資格を持つ獣医師は除く)。犬の体や健康については無知そのものです。その無知を自覚せず、犬の体のことを分かった気でいるなら犬のプロとして所詮三流でしょう。

話がそれたので戻します。一見簡単で誰にでも出来そうなリードを引くやり方は、実はとてもリスクと難易度が高いのです。

リスクも少なく安全に初心者でも実行できるということが、フードを使うやり方を勧める理由の一つです。

場所を選ばず実行できるから

先に紹介した、遊びをご褒美にするやり方は、実行できる場所が限られています。お散歩中に公道でボール遊びなど出来ませんよね。動物病院の待合室で、オモチャを使って犬の意識を誘導したのでは周囲に迷惑です。

その点フードを使うやり方であれば、食べ物持ち込み禁止のドッグランなど、特定の場所を除き、どこでもいつでも実行可能です。

まとめ

如何でしたか?フードは使っても使わなくてもどちらでも問題ありません。4つの条件を満たすしつけ方なら何でもいいのです。いろいろなしつけ方を覚えて、場所や状況によって使い分けることが出来れば、「犬のしつけマスター」といえるでしょう。

参考文献・お勧め図書

太田光明 大谷伸代編著(2011)『ドッグトレーニング パーフェクトマニュアル』チクサン出版社

PAGE TOP