このページはしつけの基本中の基本中の基本について解説します。
車の運転に例えると、「車はアクセルを踏むと加速し、ブレーキを踏むと減速します」程度のことです。それだけ知っていても、どれがアクセルでどれがブレーキかを知らなければ、車を発進させることも出来ません。それくらい基礎的なことしか書いていませんので、このページだけ読んで実践しようとしないでください。
基礎的ではありますが、このページの内容はドッグトレーニングの根幹をなす理論であり、避けて通れません。ここを理解しなければ、犬のしつけは出来ないでしょう。一番重要な内容となりますので、是非最後までご覧ください。
はじめに
根性論大国の日本人は「誉めて育てる」のが苦手な民族です。
ドッグトレーニングにおいてもそれは顕著で、長い間、犬に行動を矯正したり苦痛を与える訓練が主流でした。確かに、「行動」させるだけが目的であれば矯正する訓練でも出来るかもしれません。
しかしそのような方法では犬に過剰なストレスがかかったり、そのストレスが原因で攻撃的になるケースも少なくありません。特に暴力的なしつけをすると、犬が攻撃的になる方が普通です。
やられたらやり返すのは生き物として当たり前のことですからね。
現代では行動分析学や動物行動学の観点から誉めるしつけが推奨されています。このブログでも「褒めるしつけ」を推奨し、効率の良い褒め方や、いかにして「褒める」を活用するのか詳しく解説していきます。
行動を学習するときの大原則
生き物の行動特性をまず理解しましょう。これは学習心理学や行動分析学の内容です。基本的に、何か行動を教えたいとき、犬に何かをして欲しいときには誉めます。
行動した直後に「いいこと」があると、その行動は繰り返すようになります。逆に行動直後に「嫌なこと」があると、その行動はしなくなります。
基本的に、何か行動を覚えさせたいとき(お座りを覚えて欲しいなど)は誉めます。行動(甘噛みなど)を止めさせたいときは、叱ります。
ただし、ここでいう「いいこと」「嫌なこと」とは、行動する本人にとって「いいこと」「嫌なこと」なので、飼い主の想像通りとは限りません。
飼い主が叱っているつもりでも犬にとっては嬉しかったり、逆に誉めているつもりでも犬にとっては苦痛だったりします。誉めたけどお座りを覚えない、叱ったけれど甘噛みを止めないという場合は、飼い主が「誉めたつもり」「叱ったつもり」になっているだけです。
犬がどう感じるかが重要なので、人間の常識で考えてはいけません。しっかり犬の生物学的特性学び、何をすればワンちゃんが喜ぶのか、何をすると嫌がるのか理解してから実践に移りましょう。
知識がない状態で経験だけ積もうとすると、間違ったやり方を正しいと信じ込んでしまうリスクがとても高いので、絶対に避けてください。実践の前にお勉強です!
上達を遅らせるのは経験による素朴概念(固定ページにて執筆中)
トレーニングの基本方針 | Doggy Life 犬のしつけ相談所 (doggylife-training.com)
行動頻度の増減
行動の増減を表にまとめるとこのようになります。
とても単純ですね。行動直後にいいことがあれば行動を繰り返しますし、嫌なことがあれば行動しなくなります。ちなみに、ここでいう「直後」とは概ね3~4秒以内です。10秒経過してから「いいこと」があっても行動頻度への影響は期待できません。
どうして直後じゃないとダメなの?
人間の場合は言葉が分かるから、「昨日はよく頑張ったね」といえば理解してもらえます。でも犬は言葉の意味を理解できないので、昨日のことを褒めても、どうして褒められたのか理解できないんです。
すぐに褒めないと忘れちゃうってこと?
忘れてはいないけど、ご褒美と自分の行動が結びつかないってことです
ね。
言葉以外で、行動とご褒美を結びつけるには直後に褒めるしかないってことか……。
犬の褒め方
「犬を褒める」というと、具体的に何をイメージしますか?
撫でる・「いいこ」と言葉をかけるなどを想像する方が多いのではいでしょうか。しかし、これらが常に「誉める」として機能するとは限りません。体を触られるのがそれほど好きでないワンちゃんは、撫でられても喜んでくれません。「いいこ」という言葉を教えていないワンちゃんに「いいこ」という言葉をかけても、喜んでくれません。
どんな場合でも簡単に使えるのはフードです。普段食べているドッグフードや犬用おやつなどを細かくちぎって、ワンちゃんが指示を聞いてくれたら一粒与えます。ワンちゃんの好みもありますので、今後しつけを実践する段階に入ったら、フードの種類を色々試してください。
犬たちが好む傾向にあるもの
- 肉類
- 発酵製品
- 匂いの強い物
オススメフード
- K9ナチュラル フィースト(総合栄養食)
- K9ナチュラル グリーントライプ(補助食)
犬の叱り方について
犬を叱るのは難易度Sランクということをご理解ください。
叱ることには副作用(他の問題の誘発、飼い主不信、ストレス過多など)があります。最小限の副作用で効率よく叱るには、タイミングや刺激の強さ・種類など、注意しなければならないことがたくさんあります。
文章で解説したところで正しく伝わることは絶対にありません。そして、間違ったやり方を実践すれば問題は100%悪化します。
また、イタズラや甘噛みなど、お悩み行動の9割は叱ることなく予防もしくは矯正できます。
ですので、このブログでは叱り方については解説しません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
叱り方をお求めの方は、期待外れだったでしょう。しかし「素人が叱っても逆効果」ということをご理解いただければ、このページを読んでいただいた意味は十分にあります。
ワンちゃんのしつけは、いかに誉めるか、いかにワンちゃんをポジティブな気持ちにさせられるかです。
今後の記事で具体的な方法を解説しますので、ワンちゃんと良好な関係を築きたい方は是非ご覧ください。
参考文献・お勧め図書等
杉山尚子『行動分析学入門—人の行動の思いがけない理由』集英社新書,2005.
杉山尚子他『行動分析学入門』産業図書, 1998.
行動アシストラボ『行動分析学基礎講座』2016